『ストリートファイター2010 ザ・ファイナルファイト』ケヴィン、宇宙を駆けろ。未来はシューティングだった

タイトル ストリートファイター2010 ザ・ファイナルファイト
発売日 1990年8月8日
発売元 カプコン
当時の定価 6,300円
ジャンル アクション

ケン? リュウ? いやいや、あの頃の俺たちが知っていたのは、宇宙を駆ける「ケヴィン」という名のサイボーグだった。『ストリートファイター』の名を冠しながら、なぜか一人でジャンプとバスターを撃ちまくる、あの異色作。タイトル画面の「2010」という未来の数字に、何かすごい進化を期待したあの頃を、あなたは覚えているだろうか。

ストリートファイターなのに格闘じゃない

あの頃、カプコンはまだ「格闘ゲームのカプコン」ではなかった。『魔界村』や『1942』で知られる、むしろシューティングや難易度の高いアクションで名を馳せたメーカーだ。そんな彼らが、当時最先端のSFイメージをふんだんに盛り込み、ファミコンで放った意欲作が『ストリートファイター2010』である。タイトルに「ストリートファイター」とあるが、これは後の隆盛を予見したものではなく、当時カプコンが北米で商標登録していた名称を流用したに過ぎない。つまり、このゲームは「格闘」ではなく、未来を舞台にした「横スクロールアクション」なのだ。開発チームは、近未来のバイオニック・ボディを持つ主人公ケンの動きに、当時のファミコンでは考えられないほどのスピードと変則的なジャンプアクションを詰め込んだ。背景のビル群や高速道路は、2010年という未来への眩しい憧憬そのものだった。

一つのボタンに秘められた二つの役割

あの独特な操作感を覚えているだろうか。十字キーでケンを前後左右に動かし、Aボタンでジャンプ、Bボタンで攻撃。しかし、Bボタンを押しながら十字キーを上下すると、エネルギー弾の射角が変わる。この一見シンプルなシステムが、このゲームの全ての面白さの源泉だった。

敵の攻撃を避けながら、自機の向きと弾の角度を同時に操る。画面は縦横無尽にスクロールし、時には重力の方向さえ変わる。一つのボタンに「攻撃」と「角度調整」という二つの機能を担わせた制約こそが、驚くべき戦略の深みを生み出した。パワーアップアイテムで弾が反射するようになれば、壁を利用したリコシェット攻撃という新たな可能性が開ける。

これは単なるシューティングゲームではない。限られた入力手段の中で、プレイヤー自身が「どう戦うか」を絶えず考えさせられる、極めてアクション性の高い思考ゲームなのである。

格闘ゲームへの道標となった操作体系

あの奇妙な操作感は、実は後の格闘ゲームの礎を築いていたのだ。本作が採用した「パンチボタンで前進、キックボタンで後退」というシステムは、キャラクターの向きと操作を切り離した画期的なものだった。この発想は、キャラクターが自動的に相手の方向を向く現代の3D格闘ゲームの基本設計に通じている。さらに、多彩な必殺技のコマンド入力という概念を、対戦型格闘ゲーム以前のアクションゲームに持ち込んだ先駆けでもあった。『ストリートファイターII』の隆盛を知る我々には、その原型がこの異色作に潜んでいたことに驚かされる。一見するとSFアクションに過ぎないこの作品は、カプコンが格闘というジャンルそのものを模索する、重要な実験場だったのである。

GAMEXスコア

キャラクタ 音楽 操作性 ハマり度 オリジナル度 総合
78/100 85/100 65/100 72/100 90/100 78/100

オリジナル度の高さがひときわ目を引く。近未来を舞台にした格闘アクションという、当時としては異色の設定が評価されたのだろう。操作性の低さは否めない。独特の跳躍と攻撃の間合いは、慣れるまでに確かな時間を要した。それでも、キャラクタと音楽の点数が全体を引き上げている。ケンという名のサイボーグが駆ける未来的なビジュアルと、テクノ調のBGMは、確かに他にはない魅力を放っていた。総合78点は、挑戦的でありながらもどこかクセの強い、そんな本作の姿を正直に映し出している。

あの未来都市の光は、今もどこかで輝いている。ケンの拳が切り拓いた道は、やがて数多の格闘ゲームへと受け継がれていくだろう。2010年はまだ訪れていないが、このゲームが描いた未来は、確かに私たちの手の中にあったのだ。