『ソンソン』孫悟空と猪八戒が駆ける、カプコン原点のガクガク強制スクロール

タイトル ソンソン
発売日 1984年12月20日
発売元 カプコン
当時の定価 4,500円
ジャンル アクション

そういえば、あの頃、ゲームセンターの片隅で、なぜか孫悟空と猪八戒が横に並んで走っているゲームがあったよな。『西遊記』の絵本みたいな世界で、二人でボタンを連打しながら、ひたすら右へ右へと進んでいく。あれがカプコンだったなんて、当時は知る由もなかった。『ソンソン』だ。あのシンプルな4方向移動と、ひたすら撃ちまくるだけの潔さが、なぜかくせになった。友達と二人でプレイするとき、どちらかがやられると「あー!」って声が出て、妙に連帯感が生まれたものだ。

カプコン初開発は『西遊記』絵本から始まった

そう、あの縦スクロールなのに上下移動がガクガクだったゲームだ。あの独特の動きは、実はカプコンが初めて本格的なゲーム開発に挑んだ、苦肉の産物だった。当時、カプコンはまだ「販売会社」に過ぎず、開発部隊は移籍組の岡本吉起や藤原得郎らが中心。彼らはコナミで培ったノウハウを持ち込んだが、ハードウェアの制約は想像以上に厳しかった。強制スクロールを実現しつつ、二人同時プレイという新機軸を盛り込むためには、キャラクターの動きを4方向に限定せざるを得なかったのだ。『西遊記』の絵本をモチーフにしたのも、親しみやすい題材で未知の領域であるゲーム開発のリスクを少しでも減らそうという、当時のカプコンの慎重さが表れている。つまり『ソンソン』は、カプコンが「作る側」に回った記念碑的作品であり、そのぎこちなさこそが、後の『魔界村』や『ロックマン』へと続く血脈の始まりだったのだ。

4方向移動が生んだ孫悟空のチェス

そういえば、あの独特な段差の上を、左右にピョンピョンと飛び移りながら進んだ感覚を覚えているだろうか。『ソンソン』の面白さの核心は、この「4方向移動」という一見不便な制約が生み出した、緊張感と駆け引きの妙にある。上下移動が段ごとに制限されているからこそ、頭上から襲いかかるコウモリや、足元を跳ねるピラニアの動きを、一呼吸おいて「段を選んで」待ち構える必要があった。コントローラーの十字キーを、左右は滑らかに、上下は「カチッ」と確信を持って押し込むあの感触だ。弾は横にしか飛ばず、パワーアップもない。だからこそ、プレイヤーは与えられた最小限の道具だけで、敵の動きのパターンを読み、グループをまとめて殲滅する「全滅ボーナス」という戦略的報酬を目指すことになる。この制約が、単純なスクロールシューティングを、まるでチェスの駒を動かすような段取りと先読みのゲームへと昇華させたのだ。

岡本吉起と藤原得郎が刻んだ協力プレイの原点

そういえば、あの頃のゲームセンターには、必ず一台は置いてあったよな。『ソンソン』だ。カプコン初の二人同時プレイという触れ込みは、当時はそれほど大したことには思えなかった。ただ、友達と肩を並べて、孫悟空と猪八戒の孫とやらを操作するのが、なんとも楽しかった記憶がある。あの単純明快な4方向移動と、横一線のショットだけのシンプルさが、逆に没入感を生んでいたと言えるだろう。

この『ソンソン』がなければ、後のカプコンは、いや、シューティングゲームそのものが違ったものになっていたかもしれない。開発を手がけた岡本吉起と藤原得郎という二人の男が、この作品で確立した「協力プレイ」という体験は、カプコンのDNAに深く刻み込まれることになる。後に『ファイナルファイト』や『ダンジョンズ&ドラゴンズ タワーオブドゥーム』といった名作ベルトスクロールアクションに受け継がれる「二人で遊ぶ楽しさ」の原型は、間違いなくここにある。さらに言えば、スクロールに同期して流れる障害物「スピンスカル」や、特定の条件で出現する隠れキャラ「弥七」といった仕掛けは、後のゲームデザインに無数のアイデアの種を蒔いたのだ。

現代から振り返れば、そのシステムは確かに原始的だ。しかし、シンプルであるが故に、敵の動きを読み、二人で役割を分担するというプレイの本質が浮き彫りになる。あの画面を6分割する「段」の概念は、プレイヤーの動きを制限すると同時に、戦略に「縦」の視点をもたらした。この制約の中から生まれる駆け引きこそが、『ソンソン』が30年以上経った今でも色褪せない理由だろう。あの頃、友達と「上を頼む!」「こっちのデク任せた!」と叫びながら遊んだ時間は、単なるレトロゲームの懐古を超えて、協力プレイゲームの原点として、今なお輝きを放っているのである。

GAMEXスコア

キャラクタ 音楽 操作性 ハマり度 オリジナル度 総合
78/100 82/100 75/100 80/100 90/100 81/100

そういえば、このゲーム、キャラクターが動物なのに妙に渋い音楽が流れていたな。総合81点というのは、まさにそんな本作の「不思議なバランス感覚」を表していると言えるだろう。特に目を引くのはオリジナル度の90点だ。西遊記の登場人物を動物に置き換え、縦スクロールと横スクロールを融合させたシューティングは、紛れもない独創だった。一方で操作性75点は、自機の動きに独特の「重み」や「クセ」を感じたプレイヤーが多かった証左かもしれない。全体として、どこか不完全で愛嬌のあるキャラクター性が、逆に強い個性と中毒性を生み出した。あの独特の世界観は、点数以上の魅力を確かに湛えていたのだ。

あの頃、コントローラーの十字キーを激しく擦り減らした指先の感覚は、今も確かに残っている。『ソンソン』がくれたのは、単なる一つのゲームではなく、縦スクロールという無限の可能性と、キャラクターの愛らしさが持つ底知れぬ力だった。今日、空を駆ける無数のシューティングゲームの源流に、あの小さな坊主と天狗の姿を見るのは、決して幻想ではないだろう。