『スーパーチャイニーズ』ナムコットのロゴが刻んだ、謎のマイクロアカデミー

タイトル スーパーチャイニーズ
発売日 1986年6月20日
発売元 ナムコ
当時の定価 4,900円
ジャンル アクション

あの頃、友達の家で遊んだゲームのタイトルを思い出せなくて、もどかしい思いをしたことはないだろうか。「あれだよ、あれ!主人公が二人いて、ジャンプで敵を踏んで、時々変な武器が出てくるやつ!」そんな会話の果てにようやく辿り着く名前が、『スーパーチャイニーズ』だった。ナムコットのロゴが入ったカセットを差し込み、タイトル画面に現れた「マイクロアカデミー」という謎のクレジットに、少しだけ大人の世界の匂いを感じたものだ。

ナムコットレーベルに刻まれた日本ゲームの名

そうそう、あのカンフーゲームだ。ジャッキーとリーの二人で妖魔軍団を殴り飛ばす、あのシンプルな熱さがたまらない。だが、このゲームがファミコンに登場した背景には、当時のゲーム業界ならではのドラマがあった。元々は日本ゲームが開発したアーケードゲーム『チャイニーズヒーロー』だった。これをファミコンに移植するにあたり、日本ゲームは自社で販売するつもりでいた。しかし、当時はまだ無名に近いメーカー。そこで目を付けたのが、ナムコのブランド力だった。ナムコに持ち込んだプロトタイプは、会議を通過。こうして『スーパーチャイニーズ』はナムコットレーベルから世に出ることになる。タイトル画面に日本ゲームの関連会社「マイクロアカデミー」の名が小さく刻まれているのは、その名残だ。これは、小さな開発会社が大手の流通網を借りて生き延びる、当時としては新しいビジネスモデルの先駆けだった。後にカルチャーブレーンとして数々の名作を生み出す同社の、最初の大きな一歩がここにあった。

殴ることで開かれる探索の扉

そういえば、あのゲームは敵を倒すだけじゃなかった。画面のあちこちに置かれた岩や氷の塊を、なぜかパンチで殴りたくなったものだ。殴れば宝箱が、時には厄介な「×マーク」が飛び出してくる。この「殴る」という行為そのものが、『スーパーチャイニーズ』の面白さの核心だった。

当時のアクションゲームは、敵を避けつつ倒して先に進むのが常道だった。しかしこのゲームは、敵よりも先にステージそのものに攻撃を加えるという発想を導入した。画面内の障害物は、単なる壁ではなく「殴れば何か出てくるかもしれない仕掛け」だったのだ。この「殴る」というプレイヤーの能動的な探索行動が、単調になりがちな敵殲滅ゲームに、宝探しのようなワクワク感を加えた。コントローラーのAボタンを連打しながら、次はどこを殴ろうかと画面をくまなく見渡したあの感覚を、覚えている者も多いだろう。

このゲームデザインは、ファミコンの技術的制約が生んだ創造性の典型例でもある。派手なスクロールや複雑な背景を描くことが難しかった時代に、固定画面という制約を逆手に取った。画面内の全てのオブジェクトが「インタラクションの対象」となり得る。開発者は限られた画面空間を、敵配置だけでなく、隠しアイテムの配置パズルとして最大限に活用したのだ。結果として、プレイヤーは敵と戦うだけでなく、ステージそのものと対話するような、他にはない没入感を味わうことができた。あの岩を殴るたびに、次は何が出るかとハラハラしたあの時間は、制約が生んだ豊かな遊び心そのものだったと言える。

岩を割るパンチが生んだアクションRPGの芽

そう、あの独特のBGMと、パンチで岩を叩き割る感覚だ。『スーパーチャイニーズ』は、一見シンプルな固定画面アクションに、驚くほど濃密な探索と成長の要素を詰め込んでいた。このゲームがなければ、後の多くの「探索型アクション」や「アクションRPG」の萌芽は、もっと遅れていたかもしれない。

具体的に言えば、岩や氷を叩いてアイテムを出現させるシステムは、後の『聖剣伝説』シリーズなどに見られる「壊せる障害物からのアイテム出現」の原型と言える。宝箱や隠しアイテムの概念を、アクションゲームにこれほど自然に組み込んだ先駆けだった。さらに、ドル袋を集めてエキストラボールやパワーボールを出現させる「アイテム連鎖システム」は、プレイヤーに戦略的なアイテム管理を促し、単純な敵殲滅を超えた深みを生み出していた。

このゲームのDNAは、開発元である日本ゲーム(後のカルチャーブレーン)の作品群に色濃く受け継がれる。『スーパーチャイニーズランド』シリーズがRPG色を強めていった流れは、固定画面アクションという枠組みから、より広い冒険の世界へと踏み出そうとする意志の表れだった。そして驚くべきは、そのシステムが『忍たま乱太郎GB』にまで流用された事実である。一見無関係な作品同士が、開発ノウハウというレベルで地続きだったことを示す好例と言えるだろう。

現代から振り返れば、グラフィックや操作性には時代の制約が感じられる。しかし、限られた画面の中に「発見」と「成長」の仕掛けを散りばめたそのゲームデザインは、当時の子供たちに、単なる反射神経だけではない別の楽しみ方を教えてくれた。次の面への門を開くためだけではなく、あの岩の裏に何が隠されているのかを探る好奇心。それが『スーパーチャイニーズ』が後世に残した、最も大きな遺産なのである。

GAMEXスコア

キャラクタ 音楽 操作性 ハマり度 オリジナル度 総合
78/100 72/100 75/100 82/100 85/100 78/100

オリジナル度が突出して高い。これは、中華料理店の息子が主人公という設定が、当時のゲーム界に吹き込んだ新鮮な風を物語っている。ハマり度も高く、シンプルながらも敵の動きを読み、ジャンプとパンチを駆使する基本の面白さに没頭させた。操作性と音楽はやや控えめな点数だ。確かに動きには独特のクセがあり、BGMも派手さはない。しかし、それがかえってこのゲームの等身大の魅力となり、キャラクターの愛嬌と相まって、多くのプレイヤーをファミコンの前に釘付けにしたのである。

あの頃、友達と交互にコントローラーを握りしめながら挑んだラスボスは、単なるゲーム上の敵ではなかった。スーパーチャイニーズが我々に植え付けたのは、無謀ともいえる挑戦の快感と、それを分かち合う熱気そのものだ。今でもローグライクと呼ばれるゲームの根底に流れる、あの「一発勝負」の緊張感は、間違いなくこの厨房から始まっている。