| タイトル | ウルトラマン倶楽部 地球奪還作戦 |
|---|---|
| 発売日 | 1990年6月29日 |
| 発売元 | バンダイ |
| 当時の定価 | 5,800円 |
| ジャンル | RPG |
あの頃、テレビの前でウルトラマンが怪獣を倒す姿に夢中だった。ならば、自分でウルトラマンを操りたい。そんな願いを、たった一つのソフトが叶えてくれた。赤いカートリッジを差し込めば、あなたはもうウルトラ戦隊の一員だ。しかし、その画面に映し出されたのは、想像とは少し違う、どこか不思議な世界だった。
バンダイが仕掛けた「シミュレーション」という実験
あの頃、テレビゲームはまだ「おもちゃ」の延長線上にあった。しかしバンダイは、単なるキャラクター商品化とは一線を画す挑戦を始めていた。『ウルトラマン倶楽部 地球奪還作戦』は、その実験的な試みの一つだ。当時、ゲームソフトはアクションやシューティングが主流で、キャラクターを動かして敵を倒すことがほとんどだった。しかしこの作品は、ウルトラマンという巨大ヒーローを「操作する」のではなく、「作戦を立案する」側にプレイヤーを立たせた。これは画期的な発想の転換である。画面に表示される地球儀と戦況マップを見つめ、どこにどのウルトラ戦士を派遣するか。その判断が、ゲームの命運を分けた。バンダイはゲームを「遊び」から「シミュレーション」へと昇華させる、一つの可能性をこの作品に込めたのだ。
変身が切り替える、地上と空中の二つのゲーム
十字キーを握りしめ、Aボタンでウルトラマンを跳躍させたあの感触を覚えているだろうか。このゲームの面白さは、シンプルな操作の中に凝縮された「変身」と「戦略」の二重構造にある。地上ではジャンプで障害物を越え、敵を踏みつけるだけの横スクロールアクションだ。しかし、変身して空を飛べば、ゲームは一変する。画面上を自由に動き回り、弱点である怪獣の背中を目がけてスペシウム光線を炸裂させる。この「視点の切り替え」が、一本のファミコンソフトに二つのゲーム性を内包させたのだ。限られたROM容量と表現力の中で、開発チームは「ウルトラマンらしさ」を「変身によるゲームモードの転換」という形で見事に昇華させている。
近接戦闘の駆け引きは格闘アクションの萌芽だった
あの独特の操作感は、確かに後のゲームデザインに一石を投じた。自機であるウルトラマンが、十字キーで移動しつつ、Aボタンでパンチ、Bボタンでキックという、二種類の近接攻撃を使い分けるシステム。これは、格闘ゲームの基本操作の原型を、アクションゲームという形で先取りしていたと言えるだろう。
後のベルトスクロールアクション、例えば『ファイナルファイト』や『怒りの鉄拳』に通じる、敵との間合いを取りながら複数の攻撃手段を使い分けるというゲーム性の萌芽が、ここにはあった。ジャンプ攻撃が存在しない代わりに、接近戦の駆け引きに全てが凝縮されている。この「近接戦闘に特化した横スクロールアクション」というジャンルの、間違いなく先駆けの一つであったのだ。
GAMEXスコア
| キャラクタ | 音楽 | 操作性 | ハマり度 | オリジナル度 | 総合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 85/100 | 72/100 | 65/100 | 70/100 | 78/100 | 74/100 |
キャラクターへの愛着が操作の難しさを凌駕する、そんなゲームだ。ウルトラマンや怪獣たちのビジュアルは確かに力入っており、ファンなら思わず見入ってしまう出来栄えである。しかし、いざプレイすると操作性の重さが立ちはだかる。動きに癖があり、攻撃が思うように決まらないもどかしさは、確かにこの点数に表れているだろう。それでも総合点が及第点を超えているのは、やはりあのヒーローたちがスクリーンに躍動する光景に、ある種の充足感があったからに違いない。
あの独特の操作感は、今でも鮮明に手に残っている。ウルトラマンという巨大なヒーローを、自らの指先で動かすという実感。それは単なるゲームの枠を超え、子供部屋の小さなテレビの中で、自分自身が光の巨人になるための儀式だった。現代のゲームが洗練された操作体系を追求する中で、あのぎこちなさこそが、変身への切実な願望そのものだったのだ。
