| タイトル | 聖闘士星矢 黄金伝説 |
|---|---|
| 発売日 | 1987年8月10日 |
| 発売元 | バンダイ |
| 当時の定価 | 5,500円 |
| ジャンル | RPG |
あの頃、星矢のコスモを溜めるために十字キーを連打した指は、翌日の授業中にじんじんと痛んだものだ。『聖闘士星矢 黄金伝説』は、アニメの熱狂をそのままファミコンに閉じ込めた、初のゲーム化作品だった。しかし、テレビ画面の向こう側と、8ビットの液晶画面のこちら側とでは、戦いの厳しさがまるで違った。聖闘士の名に恥じぬ戦いを求めるなら、まずはこのゲームの「伝説」の難しさをくぐり抜けなければならない。
アニメ放送中に発売された十二宮編のゲーム
そう、あのゲームだ。星矢がパンチやキックを繰り出す横スクロールのアクション部分と、黄金聖闘士との戦いで突然始まるコマンド選択式のシミュレーション部分。この二つのゲームシステムが、まるで別のゲームを遊んでいるかのような感覚を生み出していた。当時の我々は、その唐突な切り替えに戸惑いながらも、何とか黄金聖闘士を倒そうとコスモの配分に頭を悩ませたものだ。しかし、この一風変わったゲームデザインの裏には、当時のバンダイが抱えていた、ある挑戦が隠されていた。
アニメの放送にゲーム開発が追いつけないという、前代未聞の状況
『聖闘士星矢 黄金伝説』が発売された1987年は、アニメが十二宮編の真っ最中という、極めて異例のタイミングだった。漫画原作のゲーム化は珍しくないが、アニメのストーリーがまだ終わっていないうちに、その先の展開までを含めたゲームを発売するというのは、当時としては考えられないことだった。開発チームは、放送中のアニメと、『週刊少年ジャンプ』に連載される漫画の情報をかき集めながら、まだ世に出ていないストーリーを「予測」してゲームに落とし込まなければならなかった。その結果が、原作には登場しないオリジナルの最終ボス「シャドー」の存在であり、十二宮の黄金聖闘士が一部登場しないという、ある種の「不完全さ」だった。これは開発の手抜きなどではなく、メディアミックスという手法が確立される前夜における、一種の冒険だったと言える。ゲームがアニメのストーリーを先取りし、あるいは補完するという、現在では当たり前の手法の、まさに先駆けとなる試みがここにあったのだ。
コスモを振り分ける黄金聖闘士戦の真実
そういえば、あのゲーム、最初にボス戦でコマンドを選んだ時、誰もが一瞬で固まったはずだ。十字キーとA・Bボタンだけでは済まない、戦闘画面に並んだ「攻撃」「精神」「防御」「移動」の四つの選択肢。コスモという名のポイントをどう振り分けるかで、次の一瞬が決まる。この、一見するとシミュレーションRPGのような特異な戦闘システムこそが、『黄金伝説』のゲームデザインの核心だった。当時のファミコンゲームでは、ボス戦といえばアクションか、せいぜいターン制の単純なコマンド選択が主流だ。その中で、限られたコスモを「攻撃力」「命中率」「防御力」「行動順」という四つのパラメータに変換するという発想は、まさに「聖闘士同士の小宇宙のぶつかり合い」を、数字と選択肢という形で見事にゲーム化したと言える。プレイヤーは単にボタンを連打するのではなく、まるで本当に小宇宙を燃やして戦略を練る聖闘士になったような気分にさせられた。この制約こそが、単純な殴り合いを超えた、知的な緊張感と没入感を生み出したのだ。説明書にも詳しく書かれていないこのシステムを、試行錯誤で体得していく過程そのものが、このゲームの最大の「面白さ」だった。
ベルトスクロールとコマンド選択のハイブリッド革命
そういえば、あのゲーム、最初に星矢を操作するのは城戸邸の庭だったな。グラウンドを走り回って、なぜかそこにいる暗黒聖闘士を倒す。あの「何でここに敵が?」という違和感と、原作の冒頭をなぞりつつも独自の解釈で広がる世界観は、後の「原作ゲー」の一つの原型となった。『聖闘士星矢 黄金伝説』がなければ、後の多くの漫画原作ゲームは、もっと単純なベルトスクロールアクションか、あるいは完全なアドベンチャーゲームに分かれていたかもしれない。このゲームの真の革新は、フィールドを探索し、イベントを起こし、コマンド選択式のバトルに突入するという「ハイブリッド形式」にあった。特にボス戦の「コスモ振り分けシステム」は、単なるターン制RPGとは一線を画す、独自の戦略性を生み出した。この「アクション部分とシミュレーション部分の融合」という試みは、後の『ドラゴンボールZ 強襲!サイヤ人』や、さらには様々なジャンルを横断する「アドベンチャーRPG」の系譜に、確実にそのDNAを残していると言える。評価が分かれる難易度と不可解なシステムは、確かに当時のプレイヤーを悩ませたが、その実験的なゲームデザインそのものが、後の時代にとっては貴重な「挑戦の痕跡」なのである。
GAMEXスコア
| キャラクタ | 音楽 | 操作性 | ハマり度 | オリジナル度 | 総合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 92/100 | 78/100 | 65/100 | 85/100 | 94/100 | 83/100 |
そういえば、あのゲームのパッケージ裏には、妙に細かい採点表が載っていたっけ。キャラクターとオリジナル度が90点を超える一方で、操作性は65点。これが全てを物語っている。聖衣を纏い、星座を撃つ演出は紛れもなく本物だったが、コマンド入力の厳しさや動きの鈍さは、熱い気持ちを少し冷ますには十分だった。つまりこれは、ファンの熱意で遊ぶゲームだったのだ。映像と音楽で星矢の世界に浸りきれるか、それとも操作性の壁に苛立つか。その分かれ目が、この数字にはっきりと刻まれている。
あの頃、コスモを燃やして叩き込んだ必殺技のコマンドは、今や格闘ゲームのDNAとして確かに受け継がれている。黄金聖衣のパーツを集めるという単純な目的が、後のRPGに数多くの“コレクション要素”という形で息づいているのだ。画面の中の星矢たちと共に過ごした熱い時間は、決して色あせることはない。
