| タイトル | マリオブラザーズ |
|---|---|
| 発売日 | 1983年9月9日 |
| 発売元 | 任天堂 |
| 当時の定価 | 4,500円 |
| ジャンル | アクション |
そういえば、マリオって、最初は配管工だったんだよな。あの赤い帽子と青いオーバーオールは、実は作業服だった。ゲームセンターで初めて『マリオブラザーズ』の筐体を見たとき、画面の上下にいる二人の男が何をしているのか、すぐには理解できなかった。ボタンを押すと下から突き上げる。それだけの操作で、カメやカニをひっくり返して、蹴り飛ばす。シンプルすぎるそのゲーム性に、最初は「え、これだけ?」と思ったものだ。しかし、その単純さこそが、後に世界を席巻するキャラクターの原点だった。
配管工になった理由はアメリカ進出だった
そう、あの頃はまだ「マリオ」という名前すら定着していなかった。『ドンキーコング』で大工として登場したあの男は、このゲームで初めて配管工となり、弟ルイージと共に下水管に潜り込んだ。しかし、この職業設定の変更は単なる思いつきではない。当時、任天堂はアメリカ市場への本格進出を虎視眈々と狙っていた。アメリカの家庭には必ず配管工が呼ばれる日がある。その日常に溶け込む職業を主人公に据えることで、海外での親近感を獲得しようとしたのだ。『マリオブラザーズ』は、最初から世界を視野に入れた「戦略的」な作品だったのである。
開発チームは、このゲームの核となる「上下に分かれた画面」と「下からの突き上げ」というシンプルかつ中毒性の高いゲーム性にこだわった。当時のアーケードゲームは、シューティングやレースなど、一方向への進行が主流だった。それを「上下」という新たな軸で切り裂き、しかも二人同時プレイで「協力も裏切りもできる」という、かつてない対人要素を加えた。コインを一枚入れて、友達とワイワイやるか、あるいは邪魔し合ってケンカになるか。それはプレイヤーに委ねられた。この「遊び方の選択肢」が、後の『スーパーマリオブラザーズ』における「一人でじっくり」と「二人でわいわい」という二つの楽しみ方の原型となっていく。
そして忘れてはならないのが、このゲームが「マリオの基本動作の礎」を築いたことだ。ジャンプだけでなく「踏みつけ」の概念がここで生まれ、気絶した敵を蹴り飛ばす爽快感は、後のシリーズに確実に受け継がれている。あの頃、私たちはただ無心にカメを蹴り落としていたが、実はその一つ一つの動作が、ゲーム史を塗り替える大冒険の、ほんの序章に過ぎなかったのだ。
叩き上げと蹴り落としの「間」が全て
そう、あの独特の手応えを覚えているだろう。十字キーをカチカチと叩き、Aボタンを連打する。画面上のマリオは、まるで床を突き破るかのように下から敵を叩き上げる。あの「ポコッ」という衝撃音と、敵がひっくり返る一瞬の気絶。その隙に走り寄って「シュッ」と蹴り落とす。この「叩き上げ→蹴り落とし」という一連の動作こそが、このゲームの全ての面白さを凝縮していた。なぜ面白いのか。それは、極めてシンプルなルールが、プレイヤーに絶妙な「間」と「駆け引き」を強いているからだ。敵を叩き上げた後、気絶が解ける前に蹴り落とさなければならない。しかし、複数の敵をまとめて蹴り落とせば高得点。だからこそ、一匹ずつ確実に倒すか、数匹をまとめて仕留めるかという、常に危険と隣り合わせの選択が迫られる。この緊張感こそが、単純な画面構成でありながらも飽きさせない魔力の正体である。そして、このゲームデザインの核心は、厳しい制約から生まれた創造性にある。画面は上下二段の足場しかなく、プレイヤーは左右に移動し、ジャンプはできない。この「できないこと」の多さが、逆に「叩き上げる」という唯一無二のアクションを際立たせ、そのアクションを軸にした深い戦略性を生み出した。パワーブロックをいつ使うか、上段と下段の行き来をどう管理するか。制限された世界だからこそ、一つ一つの選択が重みを持ち、プレイヤーは自らの判断で「創造的」なプレイを編み出していくのだ。
邪魔し合いの楽しさが生んだ対戦アクションの源流
そう、あの土管から次々と湧き出てくるカメやカニを、床下から突き上げては蹴り飛ばす、あの単純明快なリズムだ。二人で遊べば、協力も裏切りも自由という、何ともいじわるなゲームシステムは、当時の子供たちに「邪魔し合い」という新たな楽しみ方を教えてくれた。この『マリオブラザーズ』がなければ、後の『スーパーマリオブラザーズ』でおなじみの「土管」という移動・隠れ要素は生まれなかったかもしれない。敵を踏みつけて気絶させるという基本動作は、マリオの「ジャンプ攻撃」の原型と言える。そして何より、プレイヤー同士が直接干渉し合う「対戦アクション」というジャンルの先駆けとなった。後の『ボンバーマン』や、様々な対戦型アクションゲームは、この配管工兄弟のいたずら心の延長線上にあるのだ。
GAMEXスコア
| キャラクタ | 音楽 | 操作性 | ハマり度 | オリジナル度 | 総合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 85/100 | 70/100 | 78/100 | 92/100 | 95/100 | 84/100 |
そうそう、あの配管工の兄弟が初めて横並びになったゲームだ。コインを取るだけじゃない、床を叩いて敵をひっくり返し、自ら踏みつけるというあの手応え。操作性78点はもっともな数字で、慣れるまでは上下左右の動きにやや硬さを感じたものだ。だが、一度コツを掴めばこれがクセになる。ハマり度92点、オリジナル度95点という高評価が全てを物語っている。シンプルなルールの中に、対戦にも協力にも転じる深い戦術性が潜んでいた。音楽70点は確かに地味だが、あの効果音のインパクトが全てを補って余りある。これは単なる『ドンキーコング』の派生ではない、任天堂の新たな礎がここに打ち込まれた瞬間であった。
あの配管の中から飛び出した二人の兄弟は、単なるキャラクターを超えて、ゲームそのものの原風景となった。コインを集め、敵を倒すというシンプルな喜びは、その後の数十年を貫くゲームデザインの礎であり続けている。あなたが次にマリオを見かけた時、その原点が縦スクロールでも横スクロールでもなく、あの単一画面の配管工事現場にあったことを、ふと思い出すかもしれない。
