| タイトル | マッピーキッズ |
|---|---|
| 発売日 | 1989年4月21日 |
| 発売元 | ナムコ |
| 当時の定価 | 5,600円 |
| ジャンル | アクション |
そういえば、あのゲームの主人公って、マッピーの子供たちだったよな。親の世代が結婚して、今度はその子供たちが嫁取り合戦を始める。ファミコンで遊んでいた頃、そんな設定に「なんでやねん!」と突っ込みを入れつつも、妙に納得して遊んでいた記憶がある。『マッピーキッズ』だ。あの、家を建てるために金を稼ぎまくる、どこかシビアな横スクロールアクションゲームである。
ハッピーとラッキーの兄弟喧嘩が生んだ対戦システム
あの尻尾をくるくる回してゆっくり降りる感覚、覚えているだろうか。空中でAボタンを連打するあの操作は、当時の横スクロールアクションでは異色だった。『マッピーキッズ』は、単なる続編ではなかった。前作『マッピーランド』から3年、ファミコン市場が成熟し、プレイヤーが求めるものも変わろうとしていた時代の産物である。ナムコは、アーケードで確立したキャラクターを家庭用に移植するだけではなく、ファミコンというハードの特性、そして何より「二人で遊ぶ」という体験そのものを、この作品の核に据えようとした。その結果生まれたのが、協力よりも「対戦」を前面に押し出した、兄弟喧嘩そのもののゲームデザインだった。開発チームは、一つの画面を共有しながら、互いを邪魔し、時には直接攻撃し合えるシステムに挑んだ。ブーツを取ればキックの種類が変わり、敵を蹴り飛ばして相手にぶつけるという、どこかスポーツのような駆け引きが生まれる。これは、単純な「競争」を超えた、ファミコンならではの対戦形アクションの一つの到達点だったと言える。音楽を担当した松平あこ(岩永敦子)の軽快でポップなメロディは、そんな兄弟ゲンカの陽気な喧噪を、見事に彩っている。
敵を蹴り飛ばすBボタンが生む熾烈なコイン争奪戦
あの独特なキックの感触を覚えているだろうか。Bボタンを押すと、ハッピーが軽やかに足を振り上げる。敵に当たれば、コインを撒き散らしながら画面の端まで吹っ飛んでいく。この一撃が、ゲーム全体の流れを決めるのだ。
『マッピーキッズ』の面白さは、この「蹴り飛ばし」という単純なアクションに、競争と協力という二つの要素を重ねた点にある。一人で遊べば、敵を排除して安全にコインを集める手段でしかない。しかし、二人になれば話は変わる。蹴り飛ばした敵はもう一人のプレイヤーに向かって飛んでいく。それをまた蹴り返すこともできる。コインを集めるだけの作業が、突然、相手を妨害し、時には直接攻撃する熾烈なバトルへと変貌する瞬間だ。
開発チームは、ファミコンの2P同時プレイという制約を、兄弟喧嘩というストーリーに見事に昇華させた。花嫁を一人巡る双子という設定が、対戦に必然性を与えている。ただ戦うのではなく、コインという明確な「資産」を奪い合う。その緊張感は、友達と並んで遊んでいたあの頃の、笑い声と悔しがる声が入り混じった熱気を呼び起こす。
さらに深いのは、この対戦要素が「協力」を完全に否定していないことだ。エリアのボスを倒すためには一時的に手を組む必要もある。敵を蹴り飛ばすという共通のシステムが、状況に応じて「武器」にも「邪魔」にもなる。この一つの操作に多様な可能性を詰め込んだゲームデザインに、この作品の核心があると言えるだろう。
一画面共有型対戦アクションの先駆けとなったナムコの挑戦
そう、あの兄弟喧嘩がゲームの根幹を成す、あの二人プレイだった。『マッピーキッズ』の真の革新は、協力よりも「対戦」に軸足を置いた横スクロールアクションという、当時としては極めて異色のスタイルにあった。プレイヤー同士が直接キックで敵を打ち合い、奪い合った金を巡って火花を散らす。それは単なる競争を超えて、画面の中での「殺し合い」すら許容する、ある種のバトルロイヤルだった。
この「対戦型横スクロールアクション」というコンセプトは、後に『ボンバーマン』シリーズのバトルゲームや、『星のカービィ 夢の泉の物語』のサブゲーム「グレートフード奪還作戦」など、一つの画面を共有しながら互いを妨害し合うゲームプレイの先駆けとなったと言える。特に、敵を蹴り飛ばして相手にぶつけるという間接攻撃システムは、後の多くの対戦アクションに受け継がれる「アイテム」や「環境利用」の考え方の萌芽を見せている。
現代から振り返れば、そのシステムはオンライン対戦が当たり前となった今の時代にこそ光る。ローカル通信の限界を、一つの画面と創意工夫で突破しようとした、ファミコン時代の濃密な対戦体験の金字塔なのである。
GAMEXスコア
| キャラクタ | 音楽 | 操作性 | ハマり度 | オリジナル度 | 総合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 85/100 | 78/100 | 72/100 | 88/100 | 90/100 | 83/100 |
キャラクターとオリジナル度がずば抜けて高い。これは納得だ。あのふわふわと跳ねるマッピーと、ドアを開けて別世界へ飛び込む発想が、当時の子供たちの心を鷲掴みにした。一方で操作性の点数はやや控えめ。確かに、独特の弾む動きは慣れるまでに少々時間がかかったかもしれない。だが、一度そのリズムを掴んでしまえば、ハマり度の高さが物語るように、次々と現れる仕掛けに夢中になることだろう。総合83点は、挑戦しがいのある個性派としての正当な評価と言える。
あの頃、僕たちはただ無邪気に笑いながら迷路を駆け回っていた。マッピーキッズが残したものは、ゲームの可能性という名の地図の一片だ。それは今も、誰かの新しい冒険の起点として、静かにページを開いている。
