『ボンバーマン』爆弾を置く、その一歩がすべてを変えた

タイトル ボンバーマン
発売日 1985年12月20日
発売元 ハドソン
当時の定価 4,900円
ジャンル アクション
開発元 ハドソン作品や時期によって異なる場合もある。例えば、アーケード『ボンバーマンワールド』や『Atomi

あの頃、十字キーをカチカチ鳴らしながら、置いた爆弾に自分が巻き込まれる恐怖と快感を何度も味わったものだ。白いキャラクターが「ピッ」と爆弾を置き、爆発までのカウントダウンが心臓を締め付ける。画面を埋め尽くすブロックを一つずつ崩し、その向こうに隠されたアイテムを探す。ファイアーを取れば爆風が伸び、ボムアップを取れば次々に爆弾を置ける。単純明快なルールが、とてつもない中毒性を生み出していた。友達の家で対戦モードに熱中し、リモコンアイテムを巡って駆け引きしたあの時間は、紛れもないファミコン時代の原風景だ。しかし、この愛すべきボンバーマンというゲーム、そしてあの白いキャラクターには、実は驚くべき「前身」が存在した。多くのプレイヤーが知らない、もう一つの顔があるのだ。

中本伸一が発掘した「爆弾男」という名の原石

そう、あの白いロボットが爆弾をポンポン置いて、ブロックを壊しながら進んでいく。あのシンプルな動きに、なぜか夢中になったものだ。だが、この『ボンバーマン』、実はファミコン以前の、8ビットパソコン用ソフト『爆弾男』がそのルーツにある。開発者の中本伸一が過去の資産を漁った末に見つけ出した、いわば「掘り出し物」だったのだ。当時のハドソンは、パソコンゲームからファミコン市場への本格参入を模索していた時期。自社の資産を活かしつつ、ファミコンという新たなプラットフォームに最適化する必要があった。『爆弾男』のゲームシステムは、十字キーによる直感的な操作と、爆弾設置という単純明快なルールが、ファミコンのコントローラーと相性が良かった。しかし、そのタイトルには大きな問題が待ち受けていた。海外輸出を考えた際、「Bomber」という単語が当時発生したドイツの空港テロを連想させるとして敬遠されたのだ。逆に日本国内では、後に発生する皇居への火炎弾事件を前に、「爆弾」という言葉自体がはばかられるという、皮肉な逆転現象が起きる。結果、カタカナ表記の「ボンバーマン」という、どこかコミカルで親しみやすい名前が定着した。これは単なる移植ではなく、時代の空気と国際的なセンスが交錯した末の、必然的な「進化形」だったと言えるだろう。

自爆のリスクが生む「置いて、逃げる」の絶妙な駆け引き

そういえば、あの爆弾の起爆音「ピッ、ピッ、ピッ、ボーン!」は、今でも耳に残っている。十字キーを握りしめ、爆弾を置いてすぐに逃げる。その一連の動作が、なぜあんなにも心地よいリズムを生み出していたのか。ボンバーマンの面白さの核心は、この「置いて、逃げる」という極めてシンプルなルールに、絶妙な制約がかけられている点にある。自らが設置した爆弾の爆風に巻き込まれるという、他にはない自己責任の緊張感。これがなければ、単なるブロック崩しで終わっていただろう。

爆弾を置ける数が最初はたった一つ。ファイアーの威力も一マスだけ。この厳しい制約こそが、プレイヤーの創造性に火をつけた。すべてのブロックを破壊してアイテムを探す過程で、自然と爆弾の誘爆や爆風の通り道を計算するようになる。狭い通路で敵を追い詰めるには、爆弾を壁ぎりぎりに置き、爆発と同時にすり抜けるタイミングが命だ。この制約の中で生まれる駆け引きとパズル的な思考が、無限のめりはりを生み出していた。あの頃、友達の家でファミコンのコントローラーを熱く握りしめながら、誰もが無意識のうちにこのゲームデザインの妙にはまっていたのである。

対戦アクションの始祖となった白いロボットの遺伝子

そうそう、あの爆弾を置いて逃げる、あの手に汗握る感覚だ。ファミコン版『ボンバーマン』が登場した時、これは単なる脱出ゲーム以上の何かが生まれたと直感したものだ。あのシンプルなルールが、後に「対戦アクション」というジャンルそのものの礎となったことは間違いない。このゲームがなければ、『爆ボンバーマン』に代表されるような熾烈な4人対戦の楽しみは、もっとずっと遅れて登場していただろう。爆弾を武器にした対戦というシステムは、『ボンバーマン』が最初にその可能性を大衆に示した。さらに言えば、アイテムを取得して自機の性能が変化し、戦況が一変するというゲームデザインは、後の多くの対戦型ゲームに受け継がれている。一見地味なロボットの脱出劇が、友達同士でわいわい盛り上がるパーティゲームの原型を生み出したのだ。ハドソンがコナミに吸収された今でも、そのDNAは様々な形で生き続けている。

GAMEXスコア

キャラクタ 音楽 操作性 ハマり度 オリジナル度 総合
78/100 85/100 90/100 96/100 92/100 88/100

ハマり度96点という数字が全てを物語っている。ボンバーマンはキャラクターや音楽といった表面的な魅力以上に、爆弾を置くという単純な行為の奥に潜む無限の戦術性で人を虜にした。操作性90点はその証左だ。一歩の踏み込み、爆弾を置くタイミング、逃げ道の確保。全てがコントローラーを通じて直感的に伝わってくる。オリジナル度の高さは、このゲームが後に「対戦アクション」というジャンルを確立した先駆者であったことを裏付けている。キャラクター評価がやや控えめなのは、あの白色の丸い主人公よりも、むしろ爆発の炎とブロックが崩れる快感こそが主役だったからだろう。

あの頃、爆弾を置くという単純な行為が生み出した熱狂は、オンライン対戦という形で今も脈打っている。ボンバーマンが切り拓いた「対戦」という楽しみ方は、ゲームの本質を突き抜け、世代を超えて受け継がれる遺伝子となったのだ。