『ゴーストバスターズ』ビービー音とスライマーに埋もれた、もうひとつのニューヨーク

タイトル ゴーストバスターズ
発売日 1986年9月22日
発売元 徳間書店インターメディア
当時の定価 5,300円
ジャンル アクション

あの白い制服の背中に、なぜか妙に憧れた。近所のレンタルビデオ店で借りた映画の印象が強すぎて、ファミコン版『ゴーストバスターズ』のカセットを手にした時は、もうそれだけで胸が高鳴ったものだ。しかし、いざスタートボタンを押すと、そこに広がっていたのは映画とは似て非なる、ある意味で“別物”のニューヨークだった。

ハル研究所が賭けた「映画のゲーム化」の逆襲

あの独特のビービーという音と共に、ゴーストを捕獲するビーム。画面を埋め尽くすスライマーの群れ。確かに、あのゲームは映画の単なる移植ではなかった。実は、このゲームが生まれた背景には、当時のゲーム業界における「映画のゲーム化」という、ある種の賭けがあった。1980年代半ば、映画のヒットを受けたゲーム化は当たり前のように行われていたが、その多くは粗製濫造の駄作と揶揄されていた。そんな中、ハル研究所(当時はアプライド・グループ傘下)が『ゴーストバスターズ』の開発を請け負った時、彼らはただの宣伝物ではなく、「映画の世界観をゲームとして完結させる」という高い目標を掲げた。限られた容量の中で、映画の名場面を再現しつつ、オリジナルのゲームプレイを構築する。その挑戦が、あの一階から順にビルを駆け上がり、最終的にゴーザを倒すという、映画のストーリーをなぞりながらも独自のプロセスを生み出したのだ。これは単なる移植作業ではなく、映画のIPを「ゲームというメディアでどう再構築するか」という、後のライセンス作品の一つの原型となったのである。

一人用に凝縮された捕獲ビームの妙味

(前のセクションで、映画のファンがゲームに求めた「再現」への期待に触けた流れを受けて)

しかし、コントローラーを握った瞬間、多くのプレイヤーはある「ずれ」に気付いたに違いない。映画ではチームで行動するゴーストバスターズが、このゲームではなぜか一人でビルを駆け上がり、階段を下りる。この「一人用」という制約こそが、ゲームデザインの妙味を生み出したのだ。

プロトンパックを背負い、ゴーストを捕獲するという基本ルールは忠実だ。だが、その実現方法は極めてゲーム的である。エネルギーを管理しながら、出現するゴーストを的確にトラップへ誘導する。それはもはや映画の再現ではなく、リソース管理と反射神経が要求される、純粋なアクションゲームの様相を帯びていた。

限られたメモリと表現力が、逆に「捕獲」という行為への没入感を高めた。Bボタンを押し続けると伸びるビームの感触、ゴーストを左右に振って弱らせる操作、そしてAボタンでトラップを開ける瞬間。この一連の流れは、単なる映画の付録を超えて、ファミコンならではの「手応え」をプレイヤーに刻み込んだ。面白さの核心は、不完全な再現を補うために生まれた、ゲーム独自のルールと手触りにある。

捕獲という概念が生んだ後世への爪痕

あの独特の操作感は、確かに後続のゲームにその痕跡を残している。ゴーストを捕まえるという行為そのものが、後のアクションゲームにおける「捕獲」「確保」というシステムの先駆けとなったのだ。具体的には、『メトロイド』シリーズのエネミースキャンや、『ポケモン』の「捕まえる」という概念の原型は、ここにあると言っても過言ではない。敵を倒すだけでなく、特定の方法で「回収する」というゲーム性は、当時としては画期的だった。さらに、プレイヤーが操作するキャラクター同士が干渉し合う物理演算、例えば捕縛ビームが絡み合う現象は、後のマルチプレイヤー協力ゲームにおけるプレイヤー同士の干渉を意識した設計思想に通じるものがある。現代から見ればグラフィックや難易度に厳しい目が向けられることもあるが、映画の世界観を「遊び」に変換するという点で、ライセンスゲームの一つの到達点であり、その後のメディアミックス作品に大きな影響を与えた作品である。

GAMEXスコア

キャラクタ 音楽 操作性 ハマり度 オリジナル度 総合
75/100 68/100 62/100 70/100 85/100 72/100

そうそう、あの独特の手触りがあった。十字キーをガシガシと押し込む感触、Bボタンを連打した時のあの鈍い反発。ゴーストバスターズを遊んだ者なら、あの操作性62点という数字に深くうなずくだろう。確かに動きは重く、時に理不尽さすら感じる。しかし、これが逆に作品の個性を際立たせている。オリジナル度85点が物語るように、映画の世界観を無理やりゲームに押し込んだのではなく、独自の「捕獲」というゲーム性を確立したのだ。キャラクタ75点、ハマり度70点。確かに遊び込むほどに、この不自由さが妙な愛着に変わっていった。あの重い操作性こそが、プロトンパックを担いだ臨場感そのものだったと言えるかもしれない。

あの頃、幽霊を捕まえることがどれほど楽しかったか。現代の協力プレイや非対称対戦の源流には、四人の男たちがプロトンパックを背負って駆け回った、あの混沌とした画面があった。君が捕まえた最後の幽霊は、今もどこかのデータの墓場で、静かにとどろいているかもしれない。