『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』の熱狂から年月が流れ、スピンオフやリメイクでIPは絶えず動き続けている。なかでも直近のトピックは、スマホ/PC向けの新作『Persona5: The Phantom X(以下、P5X)』が今夏に日本版・グローバル版ともに始動したことだ。では――本編ナンバリング最新作『ペルソナ6(P6)』は、いつ姿を現すのか。ここでは“発売周期”の実績、そしてP5Xの運用状況という二つのレンズから、冷静に「最有力時期」を絞り込んでいく。
データで読む「発売周期」──長期化する“本編”の開発サイクル
シリーズの歩みを時系列で見ると、ナンバリングの間隔は明確に長期化している。初代(1996)から『ペルソナ2 罰』(2000)までは比較的短いスパンだったが、『ペルソナ3』(2006)から『ペルソナ4』(2008)へは約2年、そして『ペルソナ5』(2016)まで一気に約8年を要した。PS2世代からHD世代、さらに表現・システムの肥大化に伴い、AAA級JRPGの開発は“年単位のビルドアップ”が前提になったと言っていい。しかも、5以降は『P5R』(2019)や『P3R』(2024)といった大型リビルドや派生作がサンドイッチのように挟まり、スタジオのリソース配分はより複雑だ。過去の実績だけでも、P6が短期で投入される確率は高くないのではないだろうか。
P5Xの進行が示す“空白の埋め方”
2025年6月末に日本版・グローバル版がローンチしたP5Xは、P5世界観の正統スピンオフとして長期運用の軌道に乗った。ポイントは、メインストーリーをチャプター単位で段階追加していく“拡張運用”である。現時点でグローバル版は第3章の実装段階にあり、中国本土・台湾などの先行地域では第4章に到達している。アップデートの主周期はおおむね2〜3か月ごとで、チャプター更新と季節イベント、コラボを織り交ぜるリズムが確立してきた。
この前提で「全8章規模」と仮置きすれば、物語完結まで30〜36か月程度の運用余地が見えてくる。P5Xの主役世代・モチーフ・成長線を丁寧に描き切るには、腰を据えた運営と話題の“波”が不可欠だ。本編P6を早期に出してしまえば、同一ブランド内での注目・課金・時間の取り合いが発生する。IP全体の最適解は、P5Xのメインストーリーが山場を迎え、コミュニティが一段落ついた局面でP6の情報を“高密度”で投下することだと考えられる。
外部状況──セガ/アトラスのパイプラインと発表リードタイム
発表タイミングの常識からも検討しよう。アトラス級の本編ナンバリングは、初報から発売まで少なくとも8〜12か月、場合によっては1年超の広報リードを確保するのが通例だ。さらに2025年時点で『ペルソナ4 リバイバル(リメイク)』が“2026年度(FY2027)以降”の枠組みに置かれていることを踏まえると、社内パイプラインの大物がすでに来期・再来期を占めつつある構図が見える。P6が未告知のまま2026年中に滑り込む余地は、スケジュール感から見ても極めて薄いと言わざるを得ない。
「最有力時期」は2028年前後では
以上を総合すると、P6の“最有力時期”は2028年前後になると見るのが妥当だ。理由は三つある。第一に、P5Xのメインストーリー完結(またはクライマックス)までは本編と競合させない方がIP全体の価値最大化に資する。第二に、P4リメイクの発売ウィンドウがFY2027(=最短で2026年4月〜2027年3月)以降に設定されており、同年度内にP6まで重ねるのは現実的ではない。第三に、P6はシリーズの“基準線”を更新するタイトルゆえ、開発・ローカライズ・QA・グローバル同発体制まで含めた巨大プロジェクトになる。仮に2026年末〜2027年前半に初報が出ても、発売は翌年の秋口〜冬が中核ターゲットになるのではないだろうか。
ペルソナというブランドの現在地──“待たせる理由”の説得力
『ペルソナ5』はシリーズ最大の成功を収め、関連作を含む累計は一千万本規模に達した。P5RやP3R、そしてP5Xの展開は、単なる“つなぎ”ではなくIPの接点を拡張し続ける戦略だ。ペルソナの強みは「若い世代の心理と時代記号の交差」を物語に昇華する編集力にある。P6がそこに新しい答えを提示するためにも、拙速よりも周到さが求められる。ファンにとっては長い待機だが、シリーズの歴史を踏まえれば、“待たせる理由”には十分な論拠があると考えられる。
結論として、2025年はもちろん、2026年の発売も現実味は薄い。早くて2027年、筋の通った本命は2028年。P5Xの物語が大団円へ向かう頃、満を持してP6が時代の扉を開く──そんなロードマップこそ、もっとも合理的なシナリオだ。
(文責 ゲームジャーナリスト・松沢慎太郎)