| タイトル | 桃太郎伝説外伝 |
|---|---|
| 発売日 | 1991年3月1日 |
| 発売元 | ハドソン |
| 当時の定価 | 6,800円 |
| ジャンル | RPG |
そうそう、あのゲームだ。桃太郎シリーズの脇役たちが、ついに主役になったあの外伝作品。ファミコン版は確か、もうスーパーファミコン全盛期の頃に発売されたんじゃないか。桃太郎伝説IIをクリアした後、少し物足りなさを感じていた頃に、まさかのオムニバス形式の続編がやってきた。貧乏神が主人公? 夜叉姫が? 浦島太郎が? と、当時の子供心にも「ハドソン、よくやった!」と驚かされたものだ。特に貧乏神編のコンセプトは強烈だった。戦闘で敵を倒すのではなく、敵の懐から金を盗むことで「こらしめる」というシステム。RPGの常識をひっくり返す、あの鮮烈な第一印象は今でも忘れられない。
地獄に平和が訪れた後の侵略者
そう、あの『桃太郎伝説II』のエンディングで、鬼たちと和解した後の地獄はどうなったんだろうと思ったことはないか。あの平和な地獄に、今度はもっと上の地獄から侵略者が来るなんて、まさに「地獄に仏」ならぬ「地獄に鬼」という発想の転換が、この『夜叉姫伝説』の出発点だった。ハドソンは『桃太郎伝説』シリーズで確立した和風RPGのフォーマットを、今度はゲームボーイという小さな画面にどう落とし込むか、という挑戦を始めていた。その実験的な一歩が、このオムニバス形式の『外伝』だったわけだ。
貧乏神が盗むべきは悪人の心
『桃太郎伝説外伝』が生まれた背景には、ゲームボーイという新たなプラットフォームへの進出と、シリーズの世界観を深掘りしたいという二つの欲求が絡み合っている。ファミコンで人気を博した『桃太郎伝説』シリーズだったが、携帯機のゲームボーイ市場は無視できない規模に成長していた。しかし、ゲームボーイの小さなカートリッジ容量で、従来通りの大作RPGを作るのは困難だ。そこで編み出されたのが、短編3本をオムニバス形式で収録するというアイデアである。これにより、開発期間の短縮と容量の節約を両立させつつ、シリーズの脇役たちにスポットを当てるという新たな物語の扉を開いた。特に『貧乏神伝説』では、「盗み」を戦闘のメインメカニクスに据えるという、当時のRPGではほぼ例のない挑戦的な試みがなされている。敵のHPが所持金であり、それを奪うことが攻撃となるシステムは、「正義の盗み」というコンセプトを見事にゲームプレイに昇華させた。これは単なるギミックの新奇さではなく、キャラクターの本質とゲームシステムを一致させようとする、当時としては非常に先進的なデザイン思想の表れだったと言えるだろう。後にPCエンジンやファミコンにも移植されるが、そのルーツは間違いなく、ゲームボーイという制約の中で生まれた創意工夫にあった。
貧乏神が盗むのは悪人の財布そのもの
そういえば、あのゲームでは、戦闘で敵を倒すのではなく、敵からお金を盗むことで勝敗が決まった。コントローラーのAボタンを連打するたびに、敵の懐からコインがジャラジャラと舞い、所持金が増えていく。その数字の上昇が、敵の体力を削る感覚と直結していた。これが『桃太郎伝説外伝』の「貧乏神伝説」が生み出した、他に類を見ないゲームデザインの核心だ。なぜ面白いのか。それは「盗む」という行為が、単なる攻撃手段を超えて、ゲームの進行そのものと深く結びついていたからである。
町でアイテムを買うにも、通行料を払うにも、歩くことすらもお金が減っていく。プレイヤーは常に「奪う」と「使う」のバランスの上に立たされる。この絶妙な制約が、ゲーム全体に緊張感と戦略性を生み出していた。手持ちの金が少なくなれば、戦闘で積極的に盗まねばならない。逆に、敵から十分な金を盗めれば、次の町で強力な装備を購入できる。RPGの基本ループである「戦闘→報酬→成長」が、「盗む→使う→より多く盗む」という独自の循環に置き換えられたのだ。
このシステムは、当時の技術的制約が生んだ創造性の産物でもある。限られた容量の中で、経験値やレベルといった複雑な数値成長を削ぎ落とし、シンプルな「所持金」という一つのパラメータに全てを集約した。その結果、プレイヤーの行動全てが「金」という共通言語で評価される、驚くほど一貫した世界観が完成したのである。貧乏神が「正義の盗み」を掲げる物語と、このゲームシステムは見事に一致している。プレイヤーはまさにその貧乏神となり、悪い奴らから金を奪い、それを自分の力に変えて旅を続ける。あのコインの音と共に増減する数字こそが、このゲームの全ての面白さを凝縮した、唯一無二の体験だったと言えるだろう。
正義の盗みが生んだ金銭攻撃の原型
そういえば、あのゲームには「正義の盗み」なんて概念があった。貧乏神が悪い奴から金を盗むことで敵を倒す、あのシステムは、当時としてはかなり斬新だった。敵のHPがそのまま所持金であり、それを奪うことが攻撃になる。この「盗む=攻撃」という発想は、後のゲームに確実に影響を残している。
例えば、『ドラゴンクエスト』シリーズにおける「盗む」コマンドは、あくまでアイテム奪取のための補助的な行動だった。しかし『桃太郎伝説外伝』の貧乏神編は、それを戦闘のメインシステムに昇華させた。この「金を奪うことで敵を弱体化・撃破する」というゲームデザインは、後の作品、例えば特定のジョブが「金銭攻撃」を行うようなシステムや、敵の所持金を直接削る特殊スキルの原型と言えるだろう。戦闘で得た金が即座に自分の財布に入り、それがまた次の戦闘や移動で消費されていくという経済循環も、ゲーム内経済をプレイヤーの行動と直結させる先駆的な試みだった。
さらに、この作品がオムニバス形式で3つの短編を収録していた点も見逃せない。一つのパッケージに複数の主人公と物語を詰め込むこの形式は、後の「短編集成的RPG」や、一つの世界観を多角的に描く「マルチストーリー」の走りと言える。貧乏神編の「盗み」のシステム、夜叉姫編の仲間選択制、浦島編の…といった具合に、各章でゲームシステムを大胆に変えてみせる手法は、プレイヤーに飽きさせない工夫であると同時に、一つのシリーズ内で様々なゲーム体験を提供する実験場だった。あのゲームがなければ、もしかしたら「システムが章ごとにガラリと変わるRPG」というジャンルの広がりは、もう少し遅れていたかもしれない。
GAMEXスコア
| キャラクタ | 音楽 | 操作性 | ハマり度 | オリジナル度 | 総合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 85/100 | 78/100 | 72/100 | 88/100 | 95/100 | 84/100 |
オリジナル度が飛び抜けて高い。これは紛れもない事実だ。桃太郎がRPGを卒業してアクションに挑む、その発想自体が当時のプレイヤーに新鮮な驚きをもたらした。ハマり度の高さは、シンプルながらも癖になるステージ構成と、あの独特の「ぴょんぴょん」した跳躍感に起因している。一方、操作性の点数が物語るのは、慣れるまでに少々時間がかかる、あの独特の重量感だろう。だが、一度そのリズムを掴めば、これほど愛着の湧く操作感もなかった。音楽とキャラクターの親しみやすさが、その少しとっつきにくい部分を包み込み、全体として高い総合点に結びついている。
あの頃の僕たちは知らなかった。ただの変わり種RPGが、後の「桃太郎電鉄」という国民的ボードゲームの礎になるとは。桃太郎伝説外伝は、一つの実験がやがて伝説を生む、その輝かしい始まりだったのだ。
