| タイトル | エアウルフ |
|---|---|
| 発売日 | 1988年3月4日 |
| 発売元 | 教学社 |
| 当時の定価 | 5,500円 |
| ジャンル | シューティング |
あの黒いヘリが飛んでいなければ、夕方のアニメ番組は始まらなかった。チャイムが鳴り、エアウルフのテーマが流れると、リビングのテレビの前は子供たちの聖域になった。そして、その憧れを手元で再現したのが、あの赤いカセットだった。十字キーで機体を傾け、Bボタンを押し込むと、画面の向こうから風を切る音が聞こえてくるような気がしたものだ。
光線銃が操縦桿に変わる瞬間
あの独特のヘリのエンジン音は、実は開発チームのこだわりが生み出したものだった。当時、任天堂の「ファミコンロボット」に続く周辺機器として、光線銃「NES Zapper」の開発が進んでいた。しかし、単なるガンシューティングでは物足りない。そこで目を付けられたのが、アメリカで大人気だったTVドラマ『エアウルフ』である。権利を取得し、光線銹をヘリの操縦桿に見立てるという発想の転換が、このゲームを生み出した。家庭用ゲーム機で「乗り物を操縦する」という没入感を追求した、当時としては極めて意欲的な試みであった。
斜め見下ろしが生んだ疑似3Dの疾走感
あのヘリのシルエットは、まるで空飛ぶ黒いダイヤモンドのようだった。十字キーで機体を傾け、Aボタンを押し込むと、画面奥から手前に向かって流れる地形の上を、エアウルフが滑るように疾走する。この「斜め見下ろし」の疑似3D視点こそが、『エアウルフ』の全ての起点だった。当時の技術では本物の3D空間は描けず、背景の山や森は単なるスクロールする絵に過ぎない。しかし、その制約が逆に、プレイヤーに「高速で低空飛行するヘリコプター」という唯一無二の感覚を植え付けたのだ。高度を一定に保ち、障害物をかわし、燃料を気にしながら敵施設を破壊する。単純な操作の中に、パイロットとしての緊張と駆け引きが凝縮されていた。限られた技術が、かえってゲームデザインの純度を高めた稀有な例と言えるだろう。
エアウルフが遺したガンシップのDNA
あの独特の操作感は、まるで本物の操縦桿を握っているかのような錯覚を覚えさせたものだ。しかし『エアウルフ』の真の革新は、その「視点」にあった。上空からの俯瞰視点でヘリを操り、地上の敵を一掃するというスタイルは、後の「ガンシップ・シューティング」というジャンルの原型と言える。具体的には、『スターフォックス』のオープニングや、『パイロットウイングス』の一部ミッション、さらには『グランド・セフト・オート』シリーズにおけるヘリコプター操作の基本設計にまで、そのDNAは確かに受け継がれている。当時は「難しい」の一言で片付けられがちだったが、3D空間を自在に移動するという概念を、8ビットの限界の中でここまで表現した先駆性は、今こそ高く評価されるべきだろう。
GAMEXスコア
| キャラクタ | 音楽 | 操作性 | ハマり度 | オリジナル度 | 総合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 65/100 | 72/100 | 68/100 | 70/100 | 75/100 | 70/100 |
あのヘリのエンジン音は、まるで本物のテレビ番組を再現したかのようだった。キャラクタ65点というのは、確かに主人公の顔は覚えていない。だが音楽72点は納得だ。あのメインテーマが流れるだけで、なぜか背筋が伸びる。操作性68点は、慣れるまでが少し大変だったことを物語っている。しかし一度コツを掴めば、あの重厚な機体を操る感覚は他にない。オリジナル度75点が示すように、戦闘ヘリをこれほど主役に据えたゲームは珍しかった。総合70点は、決して傑作とは言えないが、忘れがたい一作である証拠だろう。
あのヘリの轟音は、単なるBGMではなかった。限られた容量の中で疾走感を研ぎ澄ました開発者の執念が、後のアクションゲームのリズム感を形作ったのだ。今、空を駆けるゲームのDNAのどこかには、必ず『エアウルフ』の旋回音が混じっている。
