『ガントレット』奪え、金貨を。だが死神は待っている

タイトル ガントレット
発売日 1987年9月11日
発売元 ナムコ
当時の定価 5,500円
ジャンル アクションRPG

あの赤い戦士のHPが刻一刻と減っていく焦燥感。四人でワイワイやっているはずなのに、なぜかいつも自分が最初に「I NEED FOOD, BADLY!」の声と共に消えていく。ファミコン版『ガントレット』は、協力プレイの楽しさよりも、仲間を出し抜いて早く金貨を拾うという、妙なサバイバルゲームだった。

四人で奪い合ったポーションの味

あの四角い画面に群がる無数の敵。赤、青、緑、黄色の戦士たちが、魔法の弾を撃ち、食料を奪い合い、死神に追いかけられる。そう、『ガントレット』だ。このゲームがアーケードに登場した1985年、それは「協力プレイ」という概念そのものを塗り替える衝撃だった。開発元のアタリゲームズ(当時はアタリの一部門)が目指したのは、それまでの協力プレイの常識を破壊すること。プレイヤー同士が助け合うだけではなく、時に限られた食料(ポーション)を巡って競い合うという、危うい協力関係をゲームの核に据えた。四人同時プレイが可能な専用コントロールパネルは、ゲームセンターの風景を一変させた。友人と肩を並べ、時に肘で小競り合いをしながら進むその体験は、単なるクリア目標を超えた、一種の「遊び場」としての空間を生み出したのだ。これは単なるアクションゲームではなく、プレイヤー同士の駆け引きをも内包した、画期的な「社交場」の誕生であった。

エド・ログの「歩く、撃つ、食べる」哲学

そう、あの赤いボタンを連打しながら、十字キーで自機を必死に操作していたあの感覚だ。ガントレットの面白さは、一見すると単純な「歩く、撃つ、食べる」という行動の連続に凝縮されている。画面中に湧き出る敵を倒し、ドアを開け、食料を探す。このループ自体が、プレイヤーに絶え間ない判断を迫る緊張感を生み出していた。四人で遊べば、貴重な食料を巡って「俺が取る!」「いや、こっちが危ない!」という駆け引きが即座に始まる。その協力と裏切りの狭間こそが、このゲームの真骨頂だったと言えるだろう。

このゲームデザインの核心は、徹底的な「資源管理」と「選択の連続」にある。体力は刻一刻と減り続け、敵は四方から押し寄せる。全ての行動にはコストがかかる。ドアを開けるにも、貴重な弾を消費しなければならない。果たしてこの部屋に入るべきか、それとも食料を求めて別の道を行くべきか。そんな判断を数秒ごとに下すことが要求された。この制約こそが、プレイヤーの創造性を刺激した。限られた弾数と体力で、いかに効率よく、いかに長く生き延びるか。その攻略の模索そのものが、無限の楽しみを生み出していたのだ。

当時は気づかなかったが、このゲームは「協力プレイの難しさ」を先取りしていた。四人でプレイすればするほど、戦略は複雑化し、時に足の引っ張り合いになる。誰がどの敵を担当し、誰が食料を取るべきか。明確な役割分担もなく、ただ画面の中を共に生き延びるだけの共同作業は、一種の原始的で、そして何よりも熱いコミュニケーションを生み出した。あの賑やかで、時に喧嘩めいたゲームセンターの一角が、このゲームのもう一つの舞台だったのである。

死神は「ウォリアーは空腹だ」とささやいた

そういえば、あの「ウォリアーは空腹だ」という声が、いつもBGMより大きかったな。アーケード版『ガントレット』のコイン投入音は、一種の興奮を呼び起こす合図だった。四人でワイワイと画面を囲み、それぞれが選んだウォリアー、ヴァルキリー、エルフ、ウィザードで、延々と湧き出す敵を倒し続ける。あの没入感は、単純な上下左右の移動と一つのボタンだけから生まれていた。

このゲームが切り拓いた「協力プレイ」の概念は、後の時代に巨大な潮流となる。四人同時プレイという形式そのものが、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のようなテーブルトークRPGのセッションを、初めてビデオゲームとして再現したと言えるだろう。特定の役割分担こそ曖昧だが、仲間と共にダンジョンを踏破するという基本構造は、後の『ダークソウル』シリーズや数多のオンライン協力型RPGに明らかに受け継がれている。さらに、敵が無限に湧き出し、プレイヤーはそれを薙ぎ払いながら前進するというゲームプレイのリズムは、いわゆる「ハクスラ」と呼ばれるジャンル、例えば『ディアブロ』の根幹をなす「敵を倒してアイテムを集める」という快楽の原型を見ることができる。

現代から振り返れば、グラフィックもシステムもシンプル極まりない。しかし、友人と肩を並べて同じ画面を見つめ、時にライフを奪い合い、時に助け合ったあの時間の価値は、ネットワークを介したプレイでは得難い生々しさを持っている。『ガントレット』は、ゲームが「遊び」である以前に「場」を生み出す装置たり得た、稀有な先駆者だったのだ。

GAMEXスコア

キャラクタ 音楽 操作性 ハマり度 オリジナル度 総合
85/100 76/100 88/100 86/100 75/100 82/100

そういえば、このゲーム、キャラの見た目はすごく印象に残っているよな。85点という高評価は納得だ。色とりどりの四人の戦士たち、あの独特のドット絵はファミコン画面の中でもひときわ異彩を放っていた。操作性の88点も頷ける。十字キーで自在に動き回り、ボタン一発で攻撃や魔法を放つあのシンプルさは、敵の大群に囲まれても慌てさせない確かな手応えがあった。一方で、音楽が76点、オリジナル度が75点とやや控えめなのは興味深い。確かにBGMは地味に繰り返す印象が強い。だが、その単調さがかえって、ダンジョンの奥深くに潜む孤独感や、仲間とプレイする時の無言の連帯感を不思議と増幅させていた気がする。点数以上の何かが、このゲームには確かに詰まっているのだ。

あの無数の敵とアイテムの洪水は、単なる混沌ではなかった。現代のローグライクや協力プレイの源流には、四人でワイワイと一つの画面を囲み、誰かが「ウォリアーは食料が必要だ」と叫んだあの熱気が、確かに流れているのだ。