カプコン、上期は過去最高益を更新 『モンハンワイルズ』の勢いに陰りも――2026年3月期第2四半期決算

株式会社カプコンは10月29日、2026年3月期第2四半期(2025年4月1日~9月30日)の連結決算を発表した。売上高は811億5200万円(前年同期比43.9%増)、営業利益は393億3300万円(同89.8%増)、経常利益は365億4300万円(同76.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は275億1400万円(同80.1%増)と、上期として過去最高水準の利益を記録した。主力のデジタルコンテンツ事業が牽引し、シリーズの底力を示す一方で、『モンスターハンターワイルズ』の販売ペースには一服感も見られる結果となった。

デジタル販売が大幅伸長 『ストリートファイター6』と『バイオ』シリーズが堅調

同社は、デジタル販売強化を中心とした成長投資を継続。グローバル市場における販売体制の拡充や人的資本への投資を推進し、コンテンツポートフォリオの安定化を図った。主力のデジタルコンテンツ事業では、移植タイトルやリピート販売の強化により、グローバルでの販売本数が前年同期の2002万本から2385万本へと拡大している。

5月には『カプコン ファイティング コレクション2』(Switch/PS4/Xbox One/PC)および『鬼武者2』を発売し、コアファンを中心に支持を得た。6月にはNintendo Switch 2向けに『ストリートファイター6』と『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』をリリース。特に『ストリートファイター6』は、eスポーツ展開と連動したグローバル戦略により累計販売本数が500万本を突破し、ブランド力をさらに拡大した。

また、2026年2月発売予定の『バイオハザード レクイエム』は、「gamescom award 2025」で最多4冠を獲得し注目を集めた。これにより既存作『ヴィレッジ』『RE:4』などの販売も引き続き堅調に推移。『デビル メイ クライ5』も映像作品の公開を契機に売上を伸ばし、シリーズのブランド認知拡大に寄与している。

デジタルコンテンツ事業の売上高は498億5200万円(前年同期比25.3%増)、営業利益は313億7800万円(同52.0%増)。このセグメントだけで全体利益の8割近くを占める構造が続いており、依然として収益の柱となっている。

『モンハンワイルズ』は上期63万本 前作『ライズ』にわずかに届かず

一方で、シリーズ最新作『モンスターハンターワイルズ』の販売ペースには鈍化の兆しも見られた。カプコンの決算資料によれば、同作は2025年2月28日に発売され、上期(4月~9月)の販売本数は63万7000本。これは2021年発売の前作『モンスターハンターライズ』の同期間実績64万3000本を下回る結果となった。

ITmedia NEWSの報道によると、ワイルズの累計販売本数は1074万5000本、ライズは1781万9000本。発売から半年間での伸びがやや鈍く、「ボリューム不足」「不具合の多さ」といったユーザーからの指摘も相まって、初期の爆発的な勢いを維持できなかったとみられる。

ただし、発売初月にはシリーズ史上最速のペースで1000万本を突破しており、海外市場では依然として高い人気を維持。カプコン側も決算内で「『モンスターハンターワイルズ』の販売に伴い、過去作『モンスターハンターライズ』も引き続き販売本数を伸ばした」とコメントしており、ブランド全体としての再評価が進んでいる。

シリーズ全体のリピート販売は2285万本(前年同期1895万本)と堅調であり、特定タイトルの勢いに一喜一憂せず、長期的な販売構造を維持していることが読み取れる。

アミューズメント事業は堅調 店舗拡充と体験型施設でブランド価値を強化

アミューズメント施設事業では、インバウンド需要の回復とともに、既存店舗の安定運営や新業態店舗の展開を進めた。期間中、「キャラカプ/カプセルラボ ららぽーと安城店」(愛知県)、「カプコンストアセンダイ」(宮城県)、「ららテラス北綾瀬店」(東京都)、「CAPCOM CONNECT SPACE」(大阪府)など計4店舗を新設。施設数は全国で57店舗となった。

同セグメントの売上高は124億5000万円(前年同期比13.3%増)、営業利益は20億1900万円(同21.1%増)。人気キャラクターを活用したイベントや物販強化が奏功し、リアル店舗の収益基盤を着実に拡大した。

スマートパチスロが好調、アミューズメント機器事業は5倍近い伸び

アミューズメント機器事業では、スマートパチスロの新機種が販売を牽引。6月に稼働した『デビル メイ クライ5 スタイリッシュトライブ』が1.1万台、10月6日稼働開始の『新鬼武者3』が1.82万台を出荷した。いずれも高い評価を得ており、昨年稼働の『モンスターハンターライズ』『バイオハザード5』なども長期稼働を維持している。

この結果、同事業の売上高は151億9100万円(前年同期比378.3%増)、営業利益は90億7800万円(同471.9%増)と大幅増。収益貢献度が急伸しており、コンテンツのマルチ展開によるIP循環型ビジネスの成功例といえる。

eスポーツ・映像・キャラクタービジネスも拡大

その他事業では、eスポーツ大会「CAPCOM Pro Tour 2025」や国内リーグ「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2025」が好評を博したほか、Netflixオリジナルアニメ『Devil May Cry』の配信により映像展開も強化された。キャラクタービジネスでも人気タイトルのグッズ販売や「大カプコン展」などのイベントを展開し、ブランド価値向上を図っている。

同セグメントの売上高は36億5700万円(前年同期比48.7%増)、営業利益は20億8000万円(同74.0%増)。非ゲーム分野での収益基盤強化が進み、総合エンターテインメント企業としての存在感を高めた。

財務体質はさらに強化 現金減少も開発投資・在庫増が背景

資産総額は前期末比で141億3000万円減の2988億5200万円。現金および預金の減少(-360億円)や売掛金減(-184億円)があった一方、投資有価証券やゲームソフト仕掛品などの増加が目立つ。開発投資の活発化によるもので、内部留保を維持しながら成長投資にシフトしている。

負債は536億6400万円(前年同期比330億円減)で、繰延収益や借入金の返済が進んだ。純資産は2451億8800万円(同188億円増)と着実に増加している。

通期見通しは据え置き 「年間1億本販売」目標を堅持

カプコンは、通期の業績予想(2026年3月期)を据え置いた。売上高1900億円(前期比12%増)、営業利益730億円(同11%増)、純利益510億円(同5.3%増)を見込む。目標である「年間1億本のゲーム販売」を維持し、グローバル市場での長期成長を掲げる。

今後も開発体制の強化と新規IP創出を進めるとともに、eスポーツ、映像、ライセンス事業など多角展開を加速させる方針。さらに、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)では「大阪ヘルスケアパビリオン」に協賛するなど、企業ブランドの社会的価値を高める活動も継続していく。

モンハン新作の評価分かれる中、盤石の収益体制へ

『モンスターハンターワイルズ』は発売初期こそシリーズ最大の勢いを見せたものの、半年間の販売ペースは前作にわずかに届かず、評価も分かれた。だが、同社全体では8期連続で営業利益が過去最高を更新しており、既存IPの持続的な収益力とブランド展開の広がりが業績を支えている。

「最高のコンテンツで世界中の人々を夢中にさせる企業」を掲げるカプコン。その中間決算は、単なる好業績の報告にとどまらず、長期的な成長戦略の確実な進行を示すものとなった。

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株式会社カプコン